かねてより当ブログでは、統計的、確率的な視点で過去の相場(値動き)から何らかの規則性を分析する「テクニカル分析」のみを拠り所とした相場分析の考え方や、その術を発信し続けてきました(もちろん、現在進行形でも発信しています)。

故に、私は紛う事なき「テクニカル派」のトレーダーであり、適切な形でテクニカル分析を行う事で、「短時間の値動きであれば、高い精度でそれを捉える事ができる」と考えています。

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短時間の値動きであれば、「テクニカル分析で十分に捉える事ができる」と考える理由については、以下の記事にて詳しく言及しておりますので、興味があれば、是非ご参照ください。

> ファンダメンタル分析とテクニカル分析。それら有効性に対する考察

ただ一方で、「相場の値動きは完全にランダムであり、何の規則性も存在しない為、統計的、確率的な視点で相場を捉える行為は無意味に等しい」と主張する方々が一定数いらっしゃるのも事実であり、往々にして、彼らは、『ランダムウォーク理論』を引き合いに、そう主張されているのが実情です。

仮に、その前提が「正」であるならば、それこそ、過去の値動きから将来の値動きを予測する事は完全に不可能という事になります。

では、相場の値動きは本当にランダムで、何の規則性も存在しないのでしょうか。

本日は、「相場はランダムウォークに基づいた確率論が支配しているのか」という題目をもって、その点に詳しく言及してみたいと思います。

相場はランダムウォークに基づいた確率論が支配しているのか

相場の世界では、理論派・実践派の「ファイナンス論者」が各々の理論的背景を拠り所として、互いに矛盾する論説をしばしば展開し合っているのですが、そんな中でも、概ね、彼らが共通して持つ「相場に対しての認識(概念)」というものも存在し、その1つが『最終的に、相場は本質的価値に近づく』という認識に他なりません。

これは要するに、「投資対象の現在価値(価格)が幾らであろうとも、最終的には、その投資対象が持つ本来の価値(価格)に到達する」という考え方であり、この視点に基づく形で、ウォーレン・バフェットを筆頭とする数々の有名投資家や機関投資家が勝ち星を重ねている事から、数少ない「相場原則の1つ」に他ならないと思います。

故に、その原則を前提とした上で、ランダムウォーク理論は、『長期的な値動きに関しては、それを決定付ける要因が存在する(= 一定の規則性が存在する)余地があるものの、短期的な値動きに関しては上昇する確率・下降する確率も共に「同じ確率」であり、そこには一切の規則性すら存在しない』と、一般的に考えられているわけです。

従って、短期的な相場は、統計学で用いられる「正規分布(以下の図)」通りに(値動きの)確率が分布するという見方が一般的であり、それこそ、上昇も下降も常に同じ確率になる為、値動きを予測する行為は「ギャンブルと同等である」と主張しているのが、ランダムウォーク理論支持派の人達の考え方に他ならないという事です。

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正規分布に基づく確率のばらつきを「株価」を例に挙げて簡単に補足しますと、仮に、ある株価の現在価格が100円である事に加え、その株価の1日における変動幅が1円だったと仮定した場合、その株価が翌日101円をつける確率と99円をつける確率は同じ50%になるはずであり、それが株価を正規分布で表現する際の出発点となります。

また、同様のプロセスで、その株価が2日後102円をつける確率と98円をつける確率も同じ25%(= 50% × 50%)であり、103円になる確率も...というように、連鎖的な視点で限りなく0に近づくまで確率を求め続ける事で、上図のようなベル型を描くという事です。

その上で、仮に、正規分布に基づく形で相場が動いているとした場合、全ての値動きには、リターンを追求できる余地は確かに有るものの、一方で、リターンと同程度のリスクも同じ確率で常に付き纏う事になります。

つまり、正規分布に基づく相場の上では、常に「リスクに見合ったリターンしか得られない」という関係性が成り立ってしまうという事です。

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仮に、リターンの割合が「1」とするならば、それに対するリスクの割合も「1」という事になる為、実質的な期待値(期待収益)は「(1 ー 1 =)0」になるという事です。

そのリスクとリターンの関係性こそ、理論支持派の方々が「相場予測はギャンブルと同等」と主張する根本的な背景に他ならないものであり、その為「リスクに見合わないリターン(リスク以上のリターン)を追求するテクニカル分析」は全く無意味な行為であるという論説が各所で展開されているわけです。

更に、そこに輪を掛ける形で、伝統的な金融の世界においてもランダムウォーク理論が支持されている傾向にあり、それこそ「長期的な相場は最終的に本質的価値に近づくという性質」と「正規分布に基づく確率論」を前提とした投資手法が、これまでに数多く開発されてきたという歴史的経緯も存在します。

そして、その代表的な投資手法が、いわゆる「インデックス投資」と呼ばれるものに他なりません。

近年「ETF(上場投資信託)」という投資商品が注目されていますが、まさに、このETFもインデックス投資に基づいた投資商品であり、加えて、ETFの運用実績から数々のファンド・証券会社でも筆頭商品として採用されている点で、インデックス投資は、もはや「お墨付きとしての地位を確立している」と言っていいと思います。

故に、歴史的な観点、及び、実際的な観点から言っても、ランダムウォーク理論には「一定の有効性がある」という事になり、そうであるからこそ、多かれ少なかれ、相場の値動きは「正規分布に基づくランダムな価格変動により支配されている」という事になるわけです。

ランダムウォーク理論と「効率的市場仮説」

ここまでの話を踏まえて頂いた上で、相場の世界には、「値動きがランダムである」という理論的背景に言及した『効率的市場仮説』というものが存在します。

この仮説によると、ランダムウォーク理論の背景では、

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『値動きに影響を及ぼす「様々な情報(新製品発表、会社の不祥事など)」が明るみになった段階で、それらの情報は瞬時に価格へと織り込まれる、つまり、市場が限りなく「効率的」に情報を織り込む』

という状況が常に成立する為、結果として、全ての投資家・トレーダーは、そのような効率的に作用する市場から「リスクに見合わないリターン(リスク以上のリターン)を得る事は不可能」という事になるようです。

よって、この効率的市場仮説は、まさしく、ランダムウォーク理論を説明する考え方であると共に、ファンダメンタル分析、テクニカル分析を真っ向から否定する仮説に他ならないわけです。

ただ、効率的市場仮説は、飽くまでも、「仮説」の域を出るものではなく、これ自体が科学的に立証されたわけでもありません。

その上、効率的市場仮説で扱われる投資家・トレーダー像は、主として「合理的」であり、ありとあらゆる情報を全て携え、そして、経済合理的な行動を取り続けるという前提から、全ての人間が持つ「非合理性」をほぼ無視した仮説でもあります。

故に、相応の批判が絶えないのも事実であり、数々の投資家・トレーダーの中でも、特に「ジョージ・ソロス」という大物投資家は、この仮説を完全に否定しているようです。

加えて、効率的市場仮説では説明が付かない成績を叩き出す投資家・トレーダーはごまんと存在するのも事実であり、その筆頭に挙がるのが「ウォーレン・バフェット」本人に他なりません。

とは言え、出来高が伴う相場ほど、その相場に関わる「あらゆる情報」が即座に織り込まれる傾向は実際にあると思いますし、仮に、非合理的な投資家の介入によって相場が適正価格から変動したとしても、少なからず、一定の割合で存在する合理的投資家によって、その価格が調整される可能性を考えると、私個人としては、あながちこの仮説を否定しきれないのが正直なところです。

従って、私個人の見解の上で、効率的市場仮説は「部分的には正しい仮説」と感じられる点もある事から、相場が正規分布通りの値動きになる(ランダムな値動きを形成する)という点についても「完全に否定はできない」と考えています。

相場の値動きは「単純な確率論」の範疇に納まらない

ただ、ここまでの話は、飽くまでも、教科書的に「正しい」とされる話であって、実際の相場(値動き)は、完全なランダムウォーク理論が当て嵌まるものではありません。

理論支持派の方々が主張するランダムウォーク理論というのは、言ってしまえば、「コイントスにおける単純な確率論」といった域を出ないものであり、対する実際の相場は、そんな単純な確率論では「到底説明が付かないもの」だからです。

それこそ、相場はコイントスと同様、正規分布に基づく単純な確率論で動いているのであれば、過去の相場が幾らを付けていようと、先々の値動きを予測する上で、そのデータは全く意味を為さないものになります。

コイントスにおいても、過去に幾ら「表」が出ようが、「裏」が出ようが、そのデータを元に先々の結果を予測しようとする人はまずいないのと同じ事です。

正規分布に基づく確率論が相場を動かすという考え方は、つまり、そう解釈するという事であり、相場の世界において、これは幾らなんでも「無理がある」と言わざるを得ません。

なぜなら、コイントスは(物理に基づく)確率論の範疇に納まるものの、相場の値動きというのは、どうあっても、そこに『投資家・トレーダーの思惑(心理)』が介入するものだからです。

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「もうこれ以上、相場は上昇しないのではないか」
「これから、まだまだ相場は上昇するに違いない」

このような相場に対峙する投資家・トレーダーが抱く「心理的傾向」は、自らの資金を相場に投入する上では、当然に抱く思惑だと思いますし、それこそ、そのような思惑を完全に排除して「相場は単純な確率論だ」と割り切るような事は、まずできないと思います。

自分自身が、そのような心理を抱く事、そして、他の誰もが抱いている事を認識できているからこそ、他の投資家・トレーダーが抱く「思惑(心理)」も必然的に垣間見える事になるんです。

故に、それら「投資家・トレーダーが抱く心理的傾向」は、当然、今後の値動きを予測する上での「判断材料」になっていくという事です。

相場は、集団が形成する「思惑(人間心理)」の結果として動く

そのような人間心理は、世界中の投資家・トレーダーが同様に抱く事になる「本能的傾向」に他ならない為、当然、そこには「集団心理に基づいた規則性」が生じていく事になります。

そして、その規則性を統計的、確率的な視点から分析するものが「テクニカル分析」である事から、まさにテクニカル分析の本質は「人間心理(集団心理)の分析」に他ならないという事です。

物理の範疇でしかないコイントスと心理的傾向が介入する相場は、決して同等のものとして考えるべきではなく、それ故、相場はランダムウォーク理論(正規分布に従うランダム性)が完全に当て嵌まるものではないんです。

従って、相場には、集団心理に基づく、ある程度の規則性が認められる事から、「リスク以上のリターンを追求できる余地が十分にある」と考えられます。

現に、以下の画像は、「理論上の正規分布(= 青)」と「実際の相場における確率分布(= 赤)」を集計した表なのですが、ご覧になってお分かり頂ける通り、実際の相場は、完全な形で正規分布に従う値動きにはなっていません。

理論の上では、同程度の「リスク/リターン」を描いていますが、対する実際の相場は、強弱を伴う形で「値動きの偏り」が存在しますし、何より、その「偏り」があるという事は、そこにリターンを追求する余地があるという事になります(投資・トレードには、「売り」から参入するという選択肢がある為、マイナス方向への偏りも十分収益に変えられます)。

よって、実際の相場に現れる確率分布から言っても、相場は「完全な形で正規分布に従わない」という事です。

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もちろん、上記で示しました画像は、実際の相場の一部に過ぎないものです。

とは言え、短期売買を行う前提であれば、全ての値動きを考慮する必要はなく、ここで言う「一部の相場」を捉えていくだけで、十分にリターンを追求できます。

そして、その短期の値動きを捉えていく上で、有効性を発揮するものこそ、「テクニカル分析」に他ならないんです。

以下の記事では、テクニカル分析が短期の値動きを攻略する上で「なぜ有効なのか」について言及しておりますので、良ければ、是非併せてご覧ください。

> ファンダメンタル分析とテクニカル分析。それら有効性に対する考察

まとめ:相場はランダムウォークに基づいた確率論が支配しているのか

以上の通り、相場の値動きは「完全にランダムウォーク理論に従わない」という結論を、

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・人間心理(集団心理)に基づく「規則性」の存在
・実際の相場における確率分布

これらを根拠とした上で言及させて頂きました。

ですが、先立つ解説でも言及しました通り、私は「相場は概ねランダムウォーク理論通りに動く」とも思っています。

飽くまでも、一時的な「値動きの偏り」は存在するものの、その大部分の値動きは、正規分布の範疇に納まるという事であり、それは前項でも示しました「実際の相場における確率分布」が、概ね正規分布に近い形を描いている点からもお分かり頂けるはずです。

よって、全ての値動きは、リターンを追求できる「宝の山」と捉えるのではなく、飽くまでも、『然るべきプロセス』と『然るべき機会』の上で、はじめてリターンを追求できるものだと捉えるようにしてください。

以上、『相場はランダムウォークに基づいた確率論が支配しているのか』について言及させて頂きました。

本記事の内容が、あなたの投資活動のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。