ダウ理論と呼ばれる相場理論を提唱したチャールズ・ダウは当時、株式相場を対象に相場の値動きを形成する「トレンド」の定義を、以下の「長期」「中期」「短期」を前提とした『3つのトレンド』に分類したと言われています。

・主要トレンド(主要となる値動きを形成する数年単位の長期トレンド)
・二次トレンド(主要トレンドの調整局面に当たる数ヶ月単位の中期トレンド)
・三次トレンド(二次トレンドの調整局面に当たる数週間単位の短期トレンド)

これが俗に、ダウ理論における「6つの原則」の内の1つ「主要となるトレンドに内在する二次的、三次的な調整トレンドが発生する」という原則に基づく相場の「特性」として提唱されている理論であり、チャールズ・ダウは、

相場は常に最も上位に位置する「主要トレンド」を起点としながら、その主要トレンドの調整局面に当たる「二次トレンド」が生成され、更には、その二次トレンドの調整局面に当たる「三次トレンド」が連鎖的に生じていく

という事を提唱したわけです。

ただ、この原則は「3つのトレンド」という点が必要以上にクローズアップされている傾向にある事から、この原則が提唱する「真意」をしっかりと捉えられていない投資家・トレーダーは決して少なくありません。

よって本日は、ダウ理論における「本質的なトレンドの特性」に迫った上で、そこから導かれる「勝てるエントリー手法」を考察していきたいと思います。

テクニカル分析の本質に則ったダウ理論の6つの原則

当記事で扱うダウ理論の原則もそうですが、全般的にダウ理論で提唱されている原則は、本質からズレた解説と共に広まってしまっているのが実情です。

ダウ理論は元々が英語圏で考案された理論である事から、その理論の詳細を綴った論文が英語で記されている為、その翻訳手の知識や技量によって若干解釈が異なる形で翻訳されている傾向にあるからです。

その上、表面的な解説をただ書き並べているようなサイトも少なくはありませんので、まさにそれらが相まって、ダウ理論を根底から押さえられている投資家・トレーダーは、実はそれほど多くはないという事です。

とは言え、ダウ理論は飽くまでも相場に則った理論である以上、「テクニカル(値動き)」の本質を前提として捉えていけば、そこまで理解が難しい理論でもありません。

以下の記事では、そんな在るべきテクニカルの本質に基づいた「ダウ理論の原則」を1つ1つ掘り下げて解説しておりますので、興味があれば、併せてご覧ください。

> ダウ理論とは。テクニカル分析の本質に則った6つの法則と事例

ダウ理論におけるトレンドの見極め方と勝てるエントリー手法の考察

タイトルが入ります。

「主要となるトレンドに内在する二次的、三次的な調整トレンドが発生する」

冒頭でも言及しました通り、実情として、この原則は、

相場は「主要トレンド」「二次トレンド」「三次トレンド」という3段階のトレンドから構成される

という事を表立って解説されている傾向にある事から、その解釈を真正面から捉えてしまっている投資家・トレーダーは少なくありません。

トレンドが3段階から構成されている以上、その3段階の内、

タイトルが入ります。

今、どのトレンドにあるのか
どのトレンドを拠り所に売買すべきか

これらを見極める事が、ダウ理論における正しいトレンドの捉え方だと多くの投資家・トレーダーは考えているという事です。

確かに、ダウ理論全般において「トレンド」は切っても切り離せない概念ですので、現段階のトレンドを見極めるといった「視点」は、ダウ理論を拠り所に売買を行う以上、極めて重要な視点に違いありません。

ただ、そのトレンドが「3つ」に限定されるかと言わば、これは必ずしもその限りではないと思います。

そもそもの大前提として、相場は長期であろうと短期であろうと「同じような波形」を描きながら値動きを形成する傾向にある事から、1分足や5分足、1時間足などの「異なる時間足に応じたトレンド」も当然ながら存在する事になるからです。

何より、それぞれの時間足に応じたトレンドが存在するという事は、大抵の場合、そのトレンドを起点とした「調整トレンド」も存在する事になる為、ここで言う「3つのトレンド」は、如何なる時間足においても現れる一種の「規則性」に他なりません。

そうなると、短い時間足を前提に捉えた場合の「主要トレンド」は、より上位に位置する時間足で捉えたトレンドの「調整局面」に相当する事になります。

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更に、先立つ上位に位置する時間足の「主要トレンド」は、より上位に位置する時間足で捉えたトレンドの「調整局面」という事にもなる以上、まさに「相場は連鎖的な視点で値動きを形成している」という事です。

よって、この原則は何も「相場は単に3つのトレンドで構成されている」という事を提唱しているわけではありません。

この原則と相場の特性を踏まえた場合、三次トレンドの調整局面に当たる「四次トレンド」、また更に四次トレンドの調整局面に当たる「五次トレンド」といったように、現在進行形の値動きに至るまで「上位に位置するトレンドの調整トレンド」は生成され続ける事になるからです。

故に、この原則に基づく相場は「3つのトレンドから構成される」と捉えるのではなく、飽くまでも「最も上位に位置する主要トレンド」を起点とした連鎖的な視点でトレンド、及び、相場を捉えなければならないという事です。

ダウ理論における「3つのトレンド」が提唱された背景

飽くまでも、私個人の推測の域を出るものではありませんが、当時、チャールズ・ダウが「3つのトレンド」を提唱したのには、時代的な背景が大きく影響していたからだと考えられます。

ダウ理論が提唱された100年以上も昔は、チャート情報を手に入れる事すらままならなかったと言われており、それこそ、今で言う「5分足」や「1時間足」などの細かなチャート分析はごく限られた人にしか手掛けられなかったようです。

よって当時は、良くても「日足以上」を前提としたチャート分析くらいしかまともに分析できる対象がなかったそうで、それ故に「3つのトレンド」というのは、そんな当時の「日足以上の時間足」を踏まえて提唱された理論だった可能性が高いと考えられるんです。

いずれにせよ、より細かなチャート分析が誰でも手掛けられる現代において、敢えて当時の相場状況に則った理屈を「そのまま活用しなければならない理由」は無いと思いますので、今の相場状況に則った形でこの理論を捉えていくべきというのが私個人の見解です。

ダウ理論におけるトレンドの真意は、相場の「連鎖関係」にある

その上で、テクニカル分析を手掛けている投資家・トレーダーの多くは、ダウ理論で提唱される「3つのトレンド」という考え方を、5分足や15分足、また1時間足などを基準とした「短期的な視点」で用いている傾向にあります。

例えば、数日〜数週間の取引を前提とした「スイングトレード」を手掛ける投資家・トレーダーであれば、

・主要トレンド(数ヶ月単位の長期トレンド)
・二次トレンド(数週間単位の中期トレンド)
・三次トレンド(数日単位の短期トレンド)

といった視点でこの原則を用いている傾向にありますし、数十分〜数時間の取引を前提とした「デイトレード」を手掛ける投資家・トレーダーの場合、

・主要トレンド(数週間単位の長期トレンド)
・二次トレンド(数日単位の中期トレンド)
・三次トレンド(数時間単位の短期トレンド)

数秒〜数分の取引を前提とした「スキャルピングトレード」を手掛ける投資家・トレーダーの場合ですと、

・主要トレンド(数日単位の長期トレンド)
・二次トレンド(数時間単位の中期トレンド)
・三次トレンド(数分単位の短期トレンド)

といった形で、適宜、各々が手掛ける時間軸に応じた「主要トレンド」と「調整トレンド」を捉えているわけです。

とは言え、現在の相場は上位に位置する相場の「連鎖関係」の上で成立している相場に他ならない以上、飽くまでも、全体的なトレンドを把握した上で、部分に相当する時間軸に応じた「主要トレンド」と「調整トレンド(二次トレンド、三次トレンド)」を捉えなければなりません。

要は、部分に相当する時間軸におけるトレンドを「森」と捉えるのではなく、より大きな流れを形成しているトレンド(森)に内在する「木(トレンド)」と捉えて相場分析を手掛けなければならないという事です。

「超」長期投資であれば、3つのトレンドで値動きを捉えられる?

ここで言う論理をそのまま解釈すると、最も上位に位置する主要トレンドと二次、三次トレンドを拠り所とする「超長期投資」であれば、非常にシンプルな視点で相場の値動きを捉えられる事になります。

上記で言うような超長期投資であれば、四次、五次、六次トレンド…、などの「細かなトレンド」を押さえる必要性がない以上、飽くまで「3つのトレンド」を前提に相場の値動きを捉えれば良いという事になるからです。

ですが、相場の性質上、長期の値動きであればあるほど、上記のような「テクニカル分析(値動きの分析)」が上手く作用しない傾向にある事から、「3つのトレンド」を押えた分析手法では、往々にして「勝つ事は出来ない」のが実情です。

長期の値動きであるほど、そこにはテクニカル分析では捉えられない「ファンダメンタルズ要因」が介入する余地が高くなるからです。

ファンダメンタル分析とテクニカル分析の違い、並びに、テクニカル分析が有効に働く局面と働かない局面については、別途、以下のような記事を用意しておりますので、興味があれば、併せてご覧ください。

> ファンダメンタル分析とテクニカル分析。それら有効性に対する考察

ですが、その『現在進行形の値動きに至るまで上位に位置する「主要トレンド」に対する「調整トレンド」が連鎖的に発生する』という特性が、テクニカル分析そのものを困難にしている要因でもあります。

主要トレンドに内在する調整トレンドは、先立つトレンドの一時的な「逆行局面」に相当する場合が大半であり、更にその調整トレンドに内在するトレンドも先立つ調整トレンドの一時的な「逆行局面」になる…、という状況が、相場の値動き、ひいてはテクニカル分析を複雑にしているという事です。

ダウ理論に基づく「勝てるエントリーポイント」の見極め方

ただ、先立つ項でも言及しました通り、全てのトレンドは「最も上位に位置する主要トレンド」を起点とした、二次、三次、四次トレンド…、という「上位トレンドに対する下位トレンド」の関係を前提としながら連鎖的に発生する傾向にあります。

そして、その「連鎖的な上位・下位関係」は「現在進行形の値動き」に至るまで発生し続ける事から、逆説的に、現在進行形の値動きを形成しているのは「最も下位に位置する調整トレンド」という結論が導き出せるわけです。

その前提の上で、上記の「最も下位に位置する調整トレンド」は、飽くまで「上位に位置するトレンド」の調整トレンドである以上、その調整トレンドの「発生」と「消滅」を左右するのは「上位に位置するトレンド」という事になります。

更に、その「上位に位置するトレンド(調整トレンド)」の発生と消滅をを左右するのは、より上位に位置するトレンド…というように、「調整トレンド(下位に位置するトレンド)」の生存期間は「上位に位置するトレンド」が司っているという事です。

故に、自身が拠り所とする時間軸(スイング、デイ、スキャルピングなど)を前提とした上で、まずはその時間軸上における「最も下位に位置する調整トレンド」を捉えると共に、

タイトルが入ります。

・その調整トレンドはどこで発生するのか(発生する可能性が高いか)
・その調整トレンドはどこで消滅するのか(消滅する可能性が高いか)

を「上位に位置するトレンド」を基準に捉えていけば、相場に無数のトレンドが存在していたとしても、1つ1つのトレンドの動きが読み取れる事になります。

それさえ分かってしまえば、後はそのトレンド動向に応じたエントリーを徹底する事で、必然的に「勝てる投資・トレード」が実現できるという事です。

まとめ:ダウ理論におけるトレンドの見極め方と勝てるエントリー手法の考察

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「主要となるトレンドに内在する二次的、三次的な調整トレンドが発生する」

ここまでご覧になって頂きました通り、ダウ理論における上記の原則は、実際の相場に照らし合わせても非常に信憑性が高い原則に他なりません。

加えて、この原則に基づく「相場の連鎖関係」は、何もチャールズ・ダウが研究の対象としていた株式相場に限らず、為替相場(FX)、仮想通貨などの「あらゆる相場」においても顕著に現れる一種の規則性でもあります。

故に、この原則は実際の相場に則している事はもとより、特定の相場にも限定されない「非常に普遍性が高い原則」であると考えられるわけです。

またダウ理論では、ここで言及した原則以外に「5つ」の原則が提唱されており、それら1つ1つの原則にも「相応の有効性」が備わっています。

以下の記事では、そんな在るべきテクニカルの本質に基づいた「ダウ理論の原則」を1つ1つ掘り下げて解説しておりますので、興味があれば、併せてご覧ください。

> ダウ理論とは。テクニカル分析の本質に則った6つの法則と事例

以上、『ダウ理論におけるトレンドの見極め方と勝てるエントリー手法の考察』というテーマで言及させて頂きました。

最後までご精読頂き、ありがとうございます。