投資対象銘柄における「過去から現在に掛けた値動きそのものの情報(= テクニカル)」から先々の相場動向(値動き)を分析する行為が、俗に『テクニカル分析』とされており、そのテクニカル分析を基に先々の相場動向を予測する投資家・トレーダーは決して少なくありません。

故に、テクニカル分析に基づく投資・トレードは『先々の相場動向を過去の値動きから分析(予測)できる』という立場に立脚したものである事から、その前提の上で、テクニカル派の投資家・トレーダーは、各々の分析基準を拠り所としたテクニカル分析を行なっているのが実情です。

しかし、彼らの多くは、テクニカル分析に基づく相場予測をことごとく「外している(= 負けている)」傾向にあり、事実、この記事をお読み頂いている方の中にも、そのようなご経験をお持ちになられている方は少なくないと思います。

ですが一方で、テクニカル分析に基づく相場予測によって勝ち越せている投資家・トレーダーが、一定の割合で存在するのも事実である以上、両者の間には、その差をもたらす「決定的な要因」があると見て間違いありません。

その上で、負けている投資家・トレーダーは、ほぼ例外なく、テクニカル分析を「間違った視点」で捉えてしまっている傾向にあり、それが勝てない根本的な原因になってしまっているのが実情なんです。

逆に、勝ち越せている投資家・トレーダーは、「本質に則った視点」でテクニカル分析を捉える事ができているからこそ、その視点に基づいた然るべき分析の結果として『勝ち越せている』という事です。

よって、本記事では、そんな勝者と敗者を分かつ「テクニカル分析の本質に則った然るべき視点」について言及していきたいと思います。

タイトルが入ります。

もちろん、勝てている側、負けている側、彼ら双方が拠り所とする投資・トレード基準(ルール)における「精度の差」が、最終的な勝敗を決定付ける要因と考えて間違い無いと思います。

ただ、その精度向上を図っていく上で、それを「達成できるか」、はたまた「困難を極めるか」は、本記事で言及する「視点の有無」に大きく左右されると言っても過言ではありません。

勝ち越せている投資家・トレーダーは、テクニカル分析に基づく有効な基準を確立する上で、まさに「テクニカル分析の本質に則った視点」を拠り所としているからこそ、それを達成できているという事です。

よって、本記事で言及する事は、テクニカル分析を突き詰めていく上で、極めて「重要」なものであり、この世界で思うような成果を上げられていない人にとっては、活路を見出すきっかけになるかもしれません。

テクニカル分析の本質は「相場心理」と「統計・確率」に基づく

冒頭でも言及しました通り、テクニカル分析は「過去から現在に掛けた値動き」を分析対象とする事から、テクニカル分析に基づく投資・トレードは『先々の相場動向を過去の値動きから分析(予測)できる』という立場を大前提としています。

よって、過去から現在に掛けた値動きには、先々の相場でも現れる「何らかのパターン(規則性)」が存在する余地があり、それを『統計・確率』の観点から導き出していく行為がテクニカル分析における1つの「本分」に他なりません。

ただ一方で、この相場の世界には、

相場の値動きは完全にランダムであり、何の規則性も存在しない為、統計的、確率的な観点で相場を捉える行為は無意味に等しい

と主張する方々が常に一定の割合で存在します。

彼らは、相場の値動きそのものを「コイントス」と同様、表が出るか、裏が出るかの「単純な確率論で上昇・下降している」と捉えてしまっている傾向にあり、それ故、テクニカル分析に基づく相場予測は『ギャンブルと同等』と主張されているわけです。

テクニカル分析と「ランダムウォーク理論」

相場の値動きは完全にランダムであると主張する方々は、俗に「ランダムウォーク理論」と呼ばれる理論を引き合いに、そう主張されている傾向にあります。

事実、このランダムウォーク理論は、主にファイナンス領域で長年支持されてきた理論である事から、それ相応の有効性を携えた理論に他なりません。

そうであるからこそ、相場の値動きには「一定のランダム性が存在する(余地がある)」という事です。

ただ、それがそのまま「テクニカル分析が無意味である」という事を私は言いたいわけではなく、一定のランダム性の中にも「先々の値動きを予測できる余地はある」と考えています。

以下の記事では、ランダムウォーク理論が支持されている相場の世界で、「なぜテクニカル分析に基づく相場予測が可能なのか」について言及しておりますので、興味があれば、併せてお読みください。

> 相場はランダムウォークに基づいた確率論が支配しているのか

それこそ、相場はコイントスと同様、単純な確率論で動いているのであれば、過去の相場が幾らを付けていようと、先々の値動きを予測する上で、そのデータは全く意味を為さないものになります。

コイントスにおいても、過去に幾ら「表」が出ようが、「裏」が出ようが、そのデータを元に先々の結果を予測しようとする人はまずいないのと同じ事です。

ただ、相場の世界に対して、この理屈をそのまま当て嵌める事は、幾らなんでも「無理がある」と言わざるを得ません。

なぜなら、コイントスは(物理に基づく)確率論の範疇に納まるものの、相場の値動きというのは、どうあっても、そこに『投資家・トレーダーの思惑(心理)』が介入するものだからです。

「もうこれ以上、相場は上昇しないのではないか」
「これから、まだまだ相場は上昇するに違いない」

このような相場に対峙する投資家・トレーダーが抱く「心理的傾向」は、自らの資金を相場に投入する上では、当然に抱く思惑だと思いますし、それこそ、そのような思惑を完全に排除して「相場は単純な確率論だ」と割り切るような事は、まずできないと思います。

自分自身が、そのような心理を抱く事、そして、他の誰もが抱いている事を認識できているからこそ、他の投資家・トレーダーが抱く「思惑(心理)」も必然的に垣間見える事になるんです。

故に、それら「投資家・トレーダーが抱く心理的傾向」は、当然、今後の値動きを予測する上での「判断材料」になっていくという事です。

また、そのような人間心理は、世界中の投資家・トレーダーが同様に抱く事になる「本能的傾向」に他ならない為、当然、そこには「集団心理に基づいた規則性」が生じていく事になります。

そして、その規則性を統計的、確率的な観点から分析するものが「テクニカル分析」である事から、まさにテクニカル分析の本質は『値動きを目にする投資家・トレーダー達が抱く「集団心理(相場心理)」の分析に他ならないわけです。

タイトルが入ります。

仮に、人間の心理が簡単に移り変わるようなものであれば、もちろん、その限りではありません。

ただ、世間(特に学問の世界)では「人間心理(人間の本能的心理)は、そう簡単には移り変わらないもの」という認識が支持されている傾向にあり、その前提の上で、心理学や行動分析学などが確立、そして、今も尚、研究され続けている事に加え、金融の世界においても、近年、プロスペクト理論を筆頭とする「行動ファイナンス」という分野が注目されています。

その事実からもお分かり頂ける通り、少なくとも、「人間心理は、突然移り変わるものではない」と考えられるからこそ、その理屈は相場においてもそのまま当てはまるものだと考えられるんです。

従って、相場(値動き)には「集団心理に基づく何らかの心理的傾向(パターン)」が存在する余地があり、それを統計的、確率的な観点から導き出せる余地も十分あるという事です。

「指標の分析」と「心理の分析」は、似ても似つかないという事です。

よって、テクニカル分析というのは、単なる「データ分析」、ひいては「テクニカル指標の分析」ではなく、「集団心理(相場心理)の分析」を主たる目的としなければなりません。

例えば、相場の世界で当たり前のように用いられている「何らかのテクニカル指標(移動平均線、ボリンジャーバンドなど)」を選ぶ際にも、

その指標は、相場心理を分析する上で、なぜ有効なのか
その指標をどう活用すれば、相場心理を有効な形で分析できるのか

などといった視点が不可欠となりますし、一般的に有効とされるような「分析手法」を採用するにしても、

相場心理を分析する上で、なぜその分析手法が有効なのか

を合理的、論理的に導き出す事ができなければ、それはただ何となく「有効とされるから使っているだけ」に等しい状況と変わらないと思います。

これらを理論立てて説明できないのであれば、それは自身が行った売買の「根拠」や「要因」を、そもそも自らが「深く落とし込めていないのと同じ事」だからです。

そして、自身が行った売買の根拠や要因が不明瞭という状況は、そこから生じた「結果に対する要因も不明瞭」という事になってしまう以上、結果として、その売買で勝てたとしても、負けたとしても、結局は「その理由すら分からない」という事態に陥ってしまいかねないんです。

そうなってしまえば、いざ勝てた時も、負けた時も、その「要因」と「結果」の因果関係を突き詰めていく事ができなくなるという事です。

当然、そのような状況では、いつまで経っても勝てるべくして勝つ事はできないと思います。

ただ意外にも、負けている投資家・トレーダーの多くは、まさにそのような状況に陥ってしまう「視点(要因)」を前提にテクニカル分析を捉えてしまっている傾向にあり、本来目を向けるべき「値動きを目にする投資家・トレーダー達の相場心理」を完全に無視してしまっているのが実情なんです。

つまり、チャート上に漠然と表示されているテクニカル指標とただひたすら向き合うだけで、その先の本来捉えるべき「相場心理」が完全に度外視されてしまっているという事です。

その上、この相場の世界には、ネットや本などで有効とされる指標を用い、そして、そこに書かれてあった「使い方」を疑う事もなく使用している投資家・トレーダーも決して少なくないのが実情で、彼らはまさに、その指標の「成り立ち」や「有効性」、ひいては「なぜその使い方が有効なのか」などを全く理解せず、ただ何気なく使っている傾向にあります。

強いて、彼らがその指標や使い方を用いる理由を挙げるとするならば、

有名な投資家・トレーダーがそう言っていたから
皆がそういった使い方をしているから

といった域を出る事はなく、そうであるからこそ、論理的な「根拠」や「要因」を明確にする事ができないのが実情なんです。

そして、それが彼らが負けてしまう実質的な原因である事から、まさに彼らは「負けるべくして負けている」と言っても過言ではありません。

一方で、勝ち越せている投資家・トレーダーはと言うと、まさにここで言及したテクニカル分析の本質を正しく捉えた上で合理的な指標を選び、そして、有効な予測基準を確立している傾向にあります。

例えば、テクニカル指標を複数組み合わせるような状況1つを取っても、それぞれの指標における「成り立ち」や「理論」を根底から認識し、そして、それら指標を組み合わせる事が「相場心理」を分析する際に「どう有効に働き」、「なぜ合理的なのか」をとことん突き詰めた上で、最終的な判断を下しているんです。

そのような「然るべき視点」と「然るべきプロセス」で指標選びや分析を行なえているからこそ、そこから導き出された「結果(売買の結果)」の良し悪しに拘らず、

・良い結果を生み出した要因
・悪い結果を生み出した要因

を論理立てて突き詰めていける為、最終的には『勝てるべくして勝つ事ができる』という事です。

まとめ:テクニカル分析の本質は「相場心理」と「統計・確率」に基づく

テクニカル分析の本質は、「集団心理(相場心理)」を統計・確率の観点から分析する事に他ならず、その際に用いるテクニカル指標などは、飽くまでも、そのような心理を分析する為の1つの手段でしかありません。

相場(値動き)は「指標」によって動いているわけではなく、飽くまでも、相場に渦巻く投資家・トレーダーの「心理」によって動いている以上、その心理動向を分析する事が『値動きの動向を予測する事に直結する』という事です。

その上で、ここで言う人間心理(相場心理)というのは、人間が元来持つ「本能的傾向」である事から、「そう簡単に移り変わるものではない」といった見方が心理学や行動分析学を筆頭とする学問の分野で支持されています。

故に、そういった「心理的な規則性(パターン)」を相場(値動き)から捉える事がテクニカル分析における「本分」に他ならず、まさに、そのような視点で『何らかの予測基準(ルール)』を導き出していく事で、勝てるべくして勝つ事ができるわけです。

以上、『テクニカル分析の本質は「相場心理」と「統計・確率」に基づく』というテーマで、テクニカル分析の本質について言及させて頂きました。

また、本記事に関連する他記事として、以下のような記事もございますので、興味があれば、併せてお読みください。

>ファンダメンタル分析とテクニカル分析。それら有効性に対する考察

> ファンダメンタル分析が有効な相場、テクニカル分析が有効な相場

本記事があなたの投資活動に、何らかの形で寄与できれば、幸いでございます。

最後までご精読頂き、ありがとうございました。