程度の差はあれど、物事には「リスクとリターン」が常に表裏一体の形で存在するものであり、当然、それは相場の世界においても例外ではありません。
その上で、人によって多少見解が分かれるものの、突き詰めると『損失を被る可能性』、ひいては『現実として損が確定してしまう事』が相場の世界におけるリスクに他ならないものであり、そうであるからこそ、限りなく全ての投資家・トレーダーは、それぞれの判断基準に基づき「損失を限定的にする為の手立てを講じている」のが実情です。
時に相場は、自らが期待しない方向へ延々と進行し続ける事がある為、そこに対して何の対策も講じず、ただ指を咥えて静観していては、いずれ全ての資金が跡形もなく消えてしまうからです。
とは言え、現実はそう単純なものではなく、リスクに対する何らかの対策を講じていたとしても、往々にして、大半の投資家・トレーダーは負けている傾向にあり、中には、再起できないほどの痛手を被るケースすら珍しくありません。
当然、彼らは、資金を全て溶かしてしまう可能性(リスク)を事前に認識した上で、そこに対する何らかの「回避策」を彼らなりの視点で講じている(いた)はずです。
ただ、それでも彼らは、現実の「損失」を伴って、ことごとくリスクに「打ちのめされる」わけです。
一方で、勝ち星を重ね続ける投資家・トレーダーが存在するのも事実であり、彼らも相応のリスクを平等に抱えている以上、当然、何らかの「リスク管理(回避策)」を講じた上で、最終的な勝ちに繋げていると考えられます。
故に、勝てている側、負けている側、双方が捉える「リスク」、そして、実践する「リスク管理」に『根本的な相違がある可能性』は決して否定できません。
そうであるからこそ、勝てている側が捉える「リスクの視点」をしっかりと認識できれば、少なくとも、再起を図れないレベルの大敗を喫する事は無くなるはずです。
よって、本日は、「投資・トレードにおけるリスクの考え方と根本的な回避策について」というテーマで、その辺りに言及していければと思います。
「勝つ事」よりも、「負けない事」「負けを小さくする事」の重要性
もちろん、勝てている側の投資家・トレーダーは、それ相応の「勝てるロジック(ルール)」を有していると考えるのが自然だと思いますし、逆に、負けている側は、そういったロジックを有していない事が1つの敗因と考えて差し支えありません。
ですが、相場は予測の範疇に納まらない「予想外の値動き」を時折り演出するものである事から、いくら予測の精度が高い勝てるロジックを有していようと、そういった「予想外の値動き」に遭遇する可能性は、常に付き纏う事になります。
これまでの相場を100%の精度で予測できたロジック(いわゆる、聖杯)が仮に存在したとしても、今後の値動きがこれまで通りに推移する保証はどこにもない為、いつ起こるか分からない「リスク」を常に織り込まなければならないんです。
でなければ、「負け戦(予想外の値動き)」に直面した時、まさに『命(全資金)』まで取られかねません。
故に、そのリスクを適切な形で抑えられる基準(損切りルール)は、勝てる基準と同等か、それ以上に重要なものと考えられる事から、それ自体が勝てている側と負けている側を分ける1つの決定的な要因に他ならないと思います。
つまり、相場は「勝つ為の基準」よりも、如何に「負けない基準」、ひいては「負けを小さくする基準」を確立する事が重要になるという事です。
とは言え、多くの投資家・トレーダーは、ここで言う「勝てる基準を確立する事」に比重を置いている一方、「負けない基準、負けを小さくする基準」については、あまり注意を向けていない方が多いように思います。
そして、それこそが「大半の投資家・トレーダーが負けている」という現実を形成している1つの要因に思えてならないんです。
事実、勝てる基準に該当する「有効なエントリー基準の確立」1つをとっても、相場が思惑通りの方向に進行するポイントを高い精度で見極める事は、言うほど簡単な事ではないですし、その上、相場が「どこまで進行するか」を見極めるとなると、非常にハードルが高いと言わざるを得ないからです。
ただ、一方で、「負けない基準」、そして「負けを小さくする基準」を有効な形で確立する事は、先立つ「勝てる基準」を構築するよりも相対的なハードルが低くなる傾向にあり、加えて、それら基準を確立する事ができれば、敢えて「勝てる基準」を追求せずとも、現実として『勝ち越せる』のが相場の世界における1つの「真実」でもあります。
以下の記事では、「なぜ負けない基準、負けを小さくする基準を確立できれば、勝ち越せるのか」について詳しく言及しておりますので、興味があれば、併せてお読みください。
投資・トレードにおけるリスクの考え方と根本的な回避策について
『損失を被る可能性』、ひいては『現実として損が確定してしまう事』が相場の世界における「リスク」であると先立つ項でも解説させて頂きました。
その上で、具体的な相場における「リスク」は、実質的に、
・値動きの変動によって発生する含み損や確定損
・値動きとは無関係に発生する手数料やスプレッド
これらに分類する事ができ、多くの負けている投資家・トレーダーは、まさに「値動きの変動によって発生する含み損や確定損」を伴う形で敗者としての道筋を辿っているとされています。
そして、そのような相場の世界における「負の側面」が一人歩きしてか、「値動きが荒い相場ほど、相乗的にリスクも高くなる」という1つの常識が形成されているのが実情であり、それ故に、株式やFX(為替)、仮想通貨は、基本的に、「リスクが高い相場」として広く認識されている傾向にあるわけです。
ただ、実は「値動きが荒くなる事」が、そのまま「リスクが高い事」を意味するわけではありません。
確かに、株式やFX、仮想通貨などの相場は、短期的な目線でも、長期的な目線でも、常に大きく変動しています。
とは言え、その値動きから生じる損失というのは「いつでも避けられるもの」に他なりません。
マイナス方向への価格変動が伴った時点で投資資金を引き上げてしまえば、当然、その取引における損失は最小限に抑えられる事になりますし、加えて、強制決済システムを使えば、それこそ、相場から強制的に資金を引き上げる事も可能です。
極端な話、1円の損失が発生した時点で、損失を確定する事もできてしまうんです。
故に、相場に内在するリスクというのは、投資家・トレーダーが「自らの裁量でコントロールできるもの」、言い換えると「限りなく最小限に抑えられるもの」に他ならないという事です。
価格変動リスクの程度は、投資家・トレーダーの裁量に左右される
だからこそ、ハイリスク(損失許容額を広げる)な投資・トレードを行うか、逆にローリスク(損失許容額を狭める)な投資・トレードを行うかは、基本的には、それを行う投資家・トレーダーに「全て委ねられている」という事になります。
とは言え、ハイリスクな投資・トレードを行う場合は、通常、そこに「相乗的に高められるリターン」が伴って然るべきであり、そうでなければ、わざわざリスクだけを高めるメリットは何一つ無いはずです。
ですが、ここでいう「値動きに伴うリスク」というのは、その許容範囲を広げる事で、より多くの損失が発生する余地があるものの、リターンも同様に大きくなる事はありません。
強いて、リスクの許容範囲を広げた場合に得られるメリットを挙げるならば、「含み損が生じたとしても、いずれプラス圏内に相場が戻ってくる可能性がある」というだけで、それがそのまま『同程度のリターンをもたらす事を意味しない』という事です。
リスクを最小限に抑えられない根本的な要因
故に、その前提の上では「リスクを最小限に抑える事が理に叶っている」という事になる為、当然、1円の含み損が発生した時点で損失を確定する事(損切り)が「正」となるはずですが、現実として、そのようなルールでは『まず間違いなく負けてしまう』のが実情です。
なぜなら、全ての相場は一定の強弱を伴って、常に上昇・下降を繰り返す傾向にある事から、損切り幅を不用意に狭め過ぎれば、たちまち損切りに掛かってしまいかねないからです。
そのような値動きを繰り返す相場に対して、不用意に損切り幅(リスク)を狭めたルールで立ち向かうものなら、その度に小さな損失だけが延々と積み重なっていく事になります。
そのルールが「功を奏した状況」の考察
もちろん、損切り幅を極限まで狭めたルールでも、「損切りライン」に到達せず、期待通りの方向へ相場が進行する事もあると思います。
とは言え、それでも相場は、一定の強弱を伴って上昇・下降を繰り返すものです。
よって、どこかの時点で相場が反転し、そのまま損切りラインに到達する事も十分考えられます。
ですが、もしかすると、いずれは期待する方向へ「延々と進行する局面」も訪れるかもしれません。
そのような場合は、そのルールが「功を奏した」という事になりますが、当然、極限まで損切り幅を狭めたルールにより、それまでに「小さな損失」を積み重ねてきたはずですから、その値動きの恩恵に預かったとしても、それまでの損失を全て取り返せるとは限らないと思います。
そして、そうこうしている内に、相場はまたどこかで反転し、そのまま損切りラインに到達する事も、当然ながら、十分考えられるんです。
故に、そのようなリスクを最小限に抑えるルールは、机上の想定ですら、「現実的ではない可能性が極めて高い」と判断できるわけです。
その上、取引を行うマーケット(市場)では、基本的に、取引を行う都度「手数料・スプレッド」という形で、(取引コストとして)強制的に資金の一部が徴収される為、それも損切り幅を最小限に狭められない要因の1つに他なりません。
損切り幅を極限まで狭めた事によって生じる「小さな損失」に輪を掛ける形で「手数料・スプレッドによる損失」も取引の都度積み重なっていけば、当然、いつかは、目も当てられない程の「損失」が現実のものとなってしまう事から、多くの投資家・トレーダーは、
・損切り幅を狭める事で生じる損失
・手数料・スプレッドで生じる損失
これら2つの要因が相まって、「ある程度のリスクを抱える前提で取引を行わなければならない状況」に苛まれているわけです。
また、中には、運用資金の大半に及ぶリスク(強制ロスカットが発動するかどうかの瀬戸際まで)を許容している投資家・トレーダーも決して珍しくありません。
故に、こうした現実が、トータル収益がプラスにならない状況や、全ての運用資金を失ってしまう状況を生じさせる根本的な原因に他ならないという事です。
相場変動リスクを許容せざるを得ない、その諸悪の根源
ただ、現実の相場(マーケット)でリターンを追求し続ける為には、結局のところ、ある程度の損失幅(リスク)を許容していく以外に道はありません。
手数料・スプレッドといった取引コストを下げる余地はあっても、常に一定の強弱を伴いながら上昇・下降する相場の性質は、どうあっても『コントロールできない』からです。
従って、勝ち星を重ねる投資家・トレーダーでさえ、「一定の含み損(リスク)は許容する事」を前提に、何らかの損切り基準(ルール)を設けてトレードを行なっているのが実情です。
とは言え、仮に、取引コストが存在しなければ、極端な話、損失ゼロの状況で運用資金を引き上げる事も可能なので、相場変動に伴うリスクというのは、突き詰めて「取引コストがそもそもの元凶」に他ならないと思います。
だからこそ、先々の「損切り」で優位な立場に立つ為にも、先立つ取引コストは『低ければ低いだけ、良い』という事になるはずです。
その上で、手数料・スプレッドといった取引コストは、然るべき「市場」と、然るべき「取引所」さえ選択できれば、現実として、引き下げる事は十分可能であり、それこそ『ゼロ』にする事も不可能ではありません。
まとめ:投資・トレードにおけるリスクの考え方と根本的な回避策について
以上の通り、ある程度のリスク(損失)を許容せざるを得ない現実というのは、
・値動きの変動によって発生する含み損や確定損
・値動きとは無関係に発生する手数料やスプレッド
これらが元凶に他ならないという事であり、その上で、「勝てている側」と「負けている側」の投資家・トレーダーは、その双方が平等に「取引コスト(値動きとは無関係に発生する手数料やスプレッド)」という形で資金の一部が徴収されている以上、長期的な勝敗を分けるのは、他でもない「相場変動に伴うリスク(値動きの変動によって発生する含み損や確定損)」だという事です。
まさに、負けている投資家・トレーダーは、相場変動に伴うリスクを不用意に広げ過ぎている事、つまり、「適切な損切り基準を見極められない事」が、現実としての『負け』、もしくは『大敗』を生じさせる決定的な要因だと考えられるわけです。
その上で、以下の記事では、その「適切な損切り基準」を確立する為の考え方やその視点について言及しておりますので、興味があれば、併せてお読みください。
> 損切りに対する考え方と有効な基準(ルール)を確立する為の視点
とは言え、その損切り基準を不用意に広げざるを得ない状況というのは、先立つ「取引コスト」が1つの要因になっている事もまた事実です。
適切な損切り基準を設ける為に、そして、単に資金面での優位性を高める為にも、先立つ取引コストは、下げられる限り下げた方が「得策」である事に違いはない為、その点に言及した以下の記事も併せてお読み頂ければと思います。
> 取引コスト(手数料・スプレッド)における優位性が高い相場とその理由
以上、『投資・トレードにおけるリスクの考え方と根本的な回避策について』について言及させて頂きました。
本記事があなたの投資活動に、何らかの形で寄与できれば、幸いでございます。
最後までご精読頂き、ありがとうございました。