テクニカル分析を拠り所に投資・トレードを行うに当たって、多くの投資家・トレーダーは、トレンド系やオシレーター系を始めとする何らかの「テクニカル指標(インジケーター)」を用いていくのが実情です。

代表的なところで言えば、

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【トレンド系インジケーター】
・移動平均線
・一目均衡表
・ボリンジャーバンド

【オシレーター系インジケーター】
・MACD
・RSI
・ストキャスティクス

などがその筆頭に挙げられると思いますが、その他「トレンドライン」や「水平線」などのように、現存する全てのテクニカル指標を含めると、まさに「ここでは挙げきれない程」の多種多様な指標が存在します。

その上で、多くの投資家・トレーダーは、これらテクニカル指標の内の「いずれか」を選定し、実際の相場分析を手掛けていくわけですが、その際、拠り所とする指標を2つ、3つと複数組み合わせて相場分析を行うような方も少なくありません。

事実、異なる複数のテクニカル指標を組み合わせる事によって「テクニカル分析の精度が向上する」と謳う情報はネット上を探すだけでもごまんと出てきますし、一般的に名著とされるテクニカル分析の書籍などにおいても同様の事が提唱されている傾向にあります。

故に、テクニカル指標を組み合わせる事がある種の「常識」と化しているわけですが、とは言え、私がこの相場の世界に足を踏み入れた当時、その常識が不思議で仕方ありませんでした。

異なる複数のテクニカル指標を組み合わせても尚、負けている投資家・トレーダーが圧倒的に多いにも関わらず、何故それが有効と言えるのかが分からなかったからです。

ですが、腹落ちするまで相場の検証と分析を重ねてきたからこそ、今ではそこに対して「一定の答え」を導き出せたと思いますので、本日は、複数のテクニカル指標を組み合わせる合理性、並びに、その問題点について言及していきたいと思います。

移動平均線などの異なるテクニカル指標を組み合わせる合理性と問題点

まず率直な結論を申し上げるならば、「異なる複数のテクニカル指標を組み合わせる事に対してはあまり合理性を見出せない」というのが私の考えであり、そう考えるのは、

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・安易なテクニカル指標の組み合わせは、それぞれの指標が持つ有効性を損なってしまう可能性がある
・いざ異なる指標を有効な形で組み合わせようとしても、その大半が困難を極めてしまう傾向にある

という2つの理由に起因しています。

冒頭でも申し上げました通り、この相場の世界には、「トレンド系」や「オシレーター系」などをはじめとする多種多様なテクニカル指標が存在する事から、実際の相場分析を行なっていく際、まずはそれら指標の「いずれかを選定するプロセス」を辿るのが一般的です。

そして、多くの投資家・トレーダーは、各々の判断基準を元にそれぞれのテクニカル指標を吟味していくわけですが、その際、その判断を左右する上で大きなウェイトを占める要素は『その指標が有効性を伴うのかどうか』だと思います。

もちろん、テクニカル指標を選定する基準は個々人によって異なるものだとは思いますが、そもそもの話、相場分析を手掛けていく上で、その指標が有効に働かないのであれば、強いてそのような指標をアテにする必要はありません。

よって、投資家・トレーダーに用いられる全般的なテクニカル指標には、それ相応の有効性が備わっている傾向にあり、それこそ、冒頭でも挙げさせて頂いた「移動平均線」などはその筆頭に挙がる代表的な指標に他ならないという事です。

その前提の上で、有効性が伴うテクニカル指標には、その指標を有効たらしめる相応の「成り立ち」や「理論的背景」も備わっていると考えられる為、それらを十分なレベルまで理解してから異なる指標同士を組み合わせる事が「然るべき道筋」だと言えます。

その指標の有効性を裏付ける「成り立ち」や「理論的背景」をしっかりと押さえていけば、

どのような局面で、そのテクニカル指標が有効になるのか
どのような局面で、そのテクニカル指標が有効にならないのか

このような判断を合理的な視点で下せるようになりますし、その上で、異なる指標同士を組み合わせるからこそ、お互いの指標が持つ「長所」や「短所」を補い合う形で用いる事ができるからです。

そのテクニカル指標が「なぜ存在するのか」や「どうして有効なのか」が分からなければ、それこそ、その指標がどういった時に有効に働くのかも分からない事となってしまう為、飽くまでも、テクニカル指標は、それ自体が持つ「理論」を前提とする形で用いるべき(組み合わせるべき)だという事です。

その上で、個々のテクニカル指標が然るべき「成り立ち」や「理論的背景」を有しているという事は、必然的にそれらを組み合わせる事で導き出される相応の「理論」が伴うはずですので、その理論と理論を組み合わせる事で生じる有効性を合理的に導き出せなければ、それは「ただ単に組み合わせただけの無意味な代物」となってしまいかねません。

少なくとも、有効なテクニカル指標同士を組み合わせれば「より有効なテクニカル分析が行える」と考えるのは非常に浅はかだと思いますし、仮に、そのようなアプローチで指標を組み合わせたところで有効な分析はまず行えないと思います。

ただ、多くの投資家・トレーダーは、まさにここで言う「成り立ち」や「理論的背景」を理解せずに複数のテクニカル指標を組み合わせている傾向にあり、それこそ、

この指標とこの指標がこのような形になったらエントリー

というような表面的な基準を元に売買を繰り返していく結果として、ことごとく「負けている」のが実情です。

そのような傾向性を持つ投資家・トレーダーは、どこかの情報を頼りに表面的な事を真に受けるだけで、その指標が持つ「理論」や「合理性」を蔑ろにしてしまっているという事です。

無論、そのような漠然としか捉えられていない状態では「勝てるものも勝てない」と思います。

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どこかの情報を頼りに売買を行う事もそうですが、そもそも表面的な理解だけで売買を行うという事は、その売買に対する「根拠」を自分自身もよく分かっていない事に等しいと思います。

そのような人達が売買を行う「根拠」というのは、大体の場合「指標がこうなったらエントリーする」程度のもので、

相場がそうなる理由はどういった事が挙げられるのか
逆に相場がそうならない理由はどういった事が挙げられるのか

などが漠然としたままであれば、そこから導き出される結果が良くも悪くも、その「勝因」も「敗因」もよく分からないという状況に陥ってしまいかねません。

それこそ、その勝因や敗因がよく分からないという事は、そこから改善を重ねていける余地も無いに等しいので、そのような状態では「勝てるものも勝てない」と言わざるを得ないんです。

どのようなテクニカル指標も「研究に研究を重ねて」生み出されたものですから、その指標を有効たらしめる「確固たる理論」が備わっているはずです。

故に、テクニカル指標を組み合わせる道筋を辿るのであれば「それら指標の背後にあるもの」を徹底的に押さえていくと共に、それら指標を組み合わせる事で相乗効果が生まれる根拠を合理的、理論的に裏付けられなければならないんです。

少なくとも、世間一般で有効とされるテクニカル指標を複数組み合わせれば「より有効な相場判断ができる」などという考え方は非常に「甘い」と思いますので、そのような考え方で有効な組み合わせをものにできる可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。

テクニカル指標を組み合わせる事がどれほど困難か、あなたはイメージできますか?

ですが、この相場の世界には、異なる複数のテクニカル指標を拠り所とする形で長期的に勝ち越せている投資家・トレーダーも少なからず存在する以上、指標を組み合わせる形で有効性を高めていける余地自体は「ある」と思います。

ここまでの話を逆説的に捉えると、それぞれのテクニカル指標が持つ「成り立ち」や「理論的背景」を合理的に組み合わせる事ができれば、その有効性を「相乗的に高められる」という事になるからです。

とは言え、それぞれのテクニカル指標に相応の「成り立ち」や「理論的背景」が備わっているという事は、それをチャート画面上に表示させる為の「計算式」も存在するはずですので、仮に、複数の指標を組み合わせるというのなら、個々の指標を構成する計算式を踏まえて合理的に組み合わせなければなりません。

現に、テクニカル指標は、まさにそのような「計算式」で構成されているものも多い為、その「計算式(理論)」と「計算式(理論)」を合理的に組み合わせる「数学的な視点」も必要になるという事です。

例えば、有名どころの「ボリンジャーバンド」というテクニカル指標で言うと、以下のような計算式をベースに構築されていますし、

その他で言うと「一目均衡表」というテクニカル指標の場合、

上記のような計算式から成り立っている以上、仮にこれらを組み合わせるのであれば、それら(複雑な)計算式を数学的な視点でも理解する事に加え、組み合わせた結果として生じる「新たな計算式」を合理的に裏付けられなくてはなりません。

それぞれの計算式が「何を意味しているのか」、その計算式によって「何を判断できるのか」などをしっかりと押さえると共に、それらを組み合わせた事で生まれる計算式の意味を理論立てて落とし込めなければ、それは「複数の計算式を無理やり組み合わせたもの(こじつけたもの)」に過ぎないと思います。

もちろん、そこを含めて行えるのであれば、有効な組み合わせに辿り着く余地はあるかもしれません。

とは言え、ただでさえ複雑な計算式の意味を理解する事自体が簡単な事ではないですし、そこに輪を掛ける形で別の複雑な計算式を組み合わせ、そして、その合理性を裏付けようものなら、間違いなく「困難を極める事になる」と思います。

まさに、それこそ私が複数のテクニカル指標を組み合わせる事に意義を見出せない理由であり、少なくとも、私にはそれが「不可能」のように思えた為、その道筋を辿る方向性には早々に見切りをつけたわけです。

テクニカル指標を徹底的に「絞り込む」という方向性

よって、テクニカル指標は異なる複数の指標を「組み合わせる」という方向性より、用いる指標を徹底的に「絞り込む(1つに絞る)」という方向性の方がまだ理に叶っていると思います。

それこそ「異なる複数のテクニカル指標」を組み合わせる場合に関しては、それぞれの指標における理論の「整合性」を突き詰めていく必要がありますが、一方で指標を1つに絞り込む場合、その指標が持つ「特性(理論)」の範疇で合理的な相場分析が行えるからです。

例えば、代表的なテクニカル指標である「移動平均線」の場合ですと、

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・短期「例: 20MA(ローソク足20本分を合計した終値の平均)」
・中期「例: 60MA(ローソク足60本分を合計した終値の平均)」
・長期「例: 200MA(ローソク足200本分を合計した終値の平均)」

このような「異なる期間(パラメーター)」を複合的に組み合わせて用いるケースが該当します。

この場合、複数のパラメーターを用いてはいますが、飽くまでも、移動平均線が持つ「特性(理論)」の範疇で分析が行える為、そこから導かれる「売買の結果」如何に拘らず、移動平均線に基づいた合理的な原因究明が行えますし、それこそ、

その移動平均線の組み合わせが有効に働く局面
その移動平均線の組み合わせが有効に働かない局面

などの切り分けも容易に行える傾向にあるわけです。

現に、有効なトレードルールを確立する為の「検証段階」においても、異なる複数のテクニカル指標を2つ、3つと組み合わせた場合、

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・それぞれの指標に備わる理論同士を合理的に裏付けなければならない
・理論の違いに伴う有効な「設定値(パラメーター)」が見極めにくい
・テクニカル分析そのものが「複雑化」してしまう

といったデメリットが生じる傾向にありますが、一方、テクニカル指標を1つに絞り込んだ場合は、

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・その指標が持つ理論に準じるだけなので合理性を裏付ける必要がない
・その理論に則った有効な「設定値(パラメーター)」を見極められる
・テクニカル分析を非常に「シンプル」な視点で行える

というメリットを享受できますので、指標を1つに絞り込む事により非常に優位なテクニカル分析が手掛けられるはずです。

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とは言え、1つのテクニカル指標を拠り所とする形で複数のパラメーターを用いる事に「問題点」が無いわけでもありません。

とりわけ、それは移動平均線などの「平均値を用いるテクニカル指標」に対して顕著に当て嵌まる傾向にあります。

以下の記事では、移動平均線を筆頭に「平均値を用いるテクニカル指標」の有効性、並びに、その問題点に言及しておりますので、興味があれば、併せてご覧ください。

> 短期、中期、長期の移動平均線を用いる合理性と問題点

事実、この相場の世界で長年勝ち越せている投資家・トレーダーほど、不用意に複数のテクニカル指標を組み合わせようとはせず、まさに上記で言及した「シンプルな視点」で相場分析を手掛けている傾向にあります。

例えば、その代表的な投資家・トレーダーで言うと、通称「BNF氏」という日本人トレーダーが挙げられますが、彼は初期資金150万円から230億円程の資産を築き上げるまでは、主にテクニカル分析による「短期トレード」がメインだったそうで、その際に用いたテクニカル指標は「移動平均線」をベースとした指標だけだったようです。

また、ネットなどで検索すれば、勝てているとされる投資家・トレーダーが用いるテクニカル指標などが何らかの形で公開されていたりもしますが、まさにそのような人ほど拠り所とする指標を絞り込んでいる事がお分かり頂けるはずです。

対して、負けている投資家・トレーダーほど、往々にして、異なる複数のテクニカル指標を組み合わせている傾向にあり、まさに彼らはここで言及した「組み合わせた上での合理性」を裏付けられず、テクニカル分析そのものを「複雑化」してしまっている事が考えられる為、それが大きな敗因と言っても過言ではありません。

実際、テクニカル指標を組み合わせずとも、1つに絞り込む事で十分有効な分析が行えますので、この方向性は多くの投資家・トレーダーにとっての1つの「勝ち筋」に他ならないと思います。

その上で、以下の記事では、実際の相場分析を手掛けていく際に用いるべき「優位性が高いテクニカル指標」について言及しておりますので、興味があれば、併せてお読みください。

> 優位性が高いテクニカル指標について

以上、『移動平均線などの異なるテクニカル指標を組み合わせる合理性と問題点』というテーマで言及させて頂きました。

本記事があなたの投資活動に、何らかの形で寄与できれば、幸いでございます。

最後までご精読頂き、ありがとうございました。