突き詰めて言うならば、相場の世界で常識とされる「損小利大」に基づくトレードが全てではないというのが私の考えであり、コツコツ勝ってドカンと負ける、いわゆる「コツコツドカン」を前提としたトレードでも長期的に稼ぐ事は可能だと考えています。
結局の所、投資・トレードにおける最終的な勝敗を決定付けるのは、
・トレード全体における勝ち負けの比率(勝率)
・トレード毎の平均的な損益比率(リスクリワード)
これらを加味した上での相対的なバランスであり、勝率とリスクリワードのバランスが「最終的に資金を増やせるもの」となっていれば、例えそれが「コツコツドカン」を前提とするトレードであったとしても、長期的に勝ち越すトレードが実現できるからです。
ただ、投資家・トレーダーの多くは、これらの内「勝率」の方にばかり視点を向けているのが実情で、中には「リスクリワード」の方を完全に無視してしまっている方も少なくありません。
まさに彼らは、1回1回の「トレードの中身(そのトレードで想定される損益比率)」よりも、1回1回「着実に勝ち星だけを重ねられるかどうか」に重きを置いてしまっているわけです。
とは言え、リスクリワードの視点を持ち合わせなければ、いつか必ず訪れる「ドカン負け」で、どの程度の資産を失うかを事前に織り込めない事になりますので、そのドカン負けで運用資金の大半、もしくは全てを失うような「致命的なダメージを食らってしまう可能性」が格段に高まる事になります。
よって、投資・トレードにおいては、勝率と併せて必ずリスクリワードも考慮しなければならず、それらを複合的に捉えた上でトレードルールを構築するからこそ、時に想定外の値動きを演出する相場であっても長期的に勝ち越せるんです。
そこで、本日は「損切り,利確の適正比率を左右する勝率とリスクリワードの関係性とは」という題目をもって、そんな勝率とリスクリワードの「意味」と「関係性」について考察していきたいと思います。
損切り,利確の適正比率を左右する勝率とリスクリワードの関係性とは
先立つ解説にて「勝率だけを重視していては相場で勝つ事はできない」と言及しましたが、そもそもの話、この理屈が理解できない方もいらっしゃるかもしれません。
極端な話、投資・トレードにおける勝率が99%だとしたならば、理論上、それは100回のトレードで99回は勝てる事を意味しますので、表面的には「連戦連勝を実現できる極めて有効な基準」のように思えてしまうのも無理はないと思います。
ただ、その高勝率を実現できるトレードの「内情」に目を向けた時、以下のような内訳であればどうでしょうか。
・99%の確率で1万円の利益が得られる
・1%の確率で100万円の損失を被る
この場合、表面的には99%の勝率を誇る事ができていますが、トレード全体の「損益」という観点で捉えた時、最終的に損失が利益を上回ってしまう「勝てない条件」となってしまっている事がお分かり頂けるはずです。
確かに、上記の内訳であれば短期的に負ける事は殆どありませんが、如何せん、一度でも「負けの目」を引いてしまった暁には、それまでに得た利益以上の損失が生じてしまう事になります。
そして、この例は全くもって極端な話ではなく、現実として、勝率に拘る投資家・トレーダーは、まさに、上記で言及したような「致命的なリスク」を抱えた基準を前提にトレードを手掛けてしまっているのが実情なんです。
つまり、勝率を上げる行為は、それに伴うトレードの「リスクの方だけを格段に高めてしまう」という事であり、これは実情として、そのような傾向にあります。
多くの人が手掛ける、勝率を「表面的」に高める方法
勝率を高める手立ては様々あると思いますが、中でも、勝率だけに拘る投資家・トレーダーが手掛ける方法は、往々にして、リスクの方だけを高めてしまっている傾向にあります。
例えば、その代表的な方法として、
「利確を早く、そして、損切りを可能な限り遅くする方法」
が挙げられますが、この方法で勝率を高めた場合、最終的に「致命的な損失」を被る事は避けられません。
確かに、この方法ですと、利確幅を縮めれば縮めるほど、或いは、損切り幅を広げれば広げるほどに、表面的な勝率を異常なまでに釣り上げる事も可能になります。
何より、相場は特定の価格帯の中で上下に動く「性質(傾向性)」がありますので、放っておいてもエントリーした地点のレートまで相場が戻る可能性があるからです。
よって、損切りを実行しなければ、最終的に相場の恩恵に預かれる可能性が高まりますし、一方、利確を早めれば、逆の視点で相場が元のレートに戻るリスクを排除する事ができます。
実情として、異様なまでの高勝率を謳う人や情報商材などは、大抵、このような方法で表面的な勝率だけを高めているのが実態なんです。
ただ、時に相場は、特定の価格帯を超えて一方向に延々と値を伸ばし続ける事もありますので、そのような局面で含み損を抱えてしまうポジションを持っていたが最後、少なくとも「多大なる損失」を避ける事はできません。
もしくは、そこから相場が戻ってくる事を祈り続けた挙句、最悪「強制ロスカット」に直面する羽目になるかもしれません。
だからこそ、勝率だけを追求する行為は極めて危険であり、勝率と併せて、然るべき「リスクリワード」を設定した上でトレードルールを構築しなければならないという事です。
故に、勝率”だけ”を突き詰めていく行為は、堅実に資産を構築する上で、少なくとも「得策」とは言えず、長期的な視点で捉えるならば、はっきり言って「無意味」でしかありません。
だからこそ、勝率と併せて「リスクリワード(損益比率)」を考慮しなければならず、トレードの度に想定される「リスク(損失)」と「リターン(利益)」が、どの程度の水準になるかを予め導き出せた上で、初めて勝率が意味のある数字となるわけです。
リスクリワードを織り込んで初めて「勝率」に価値が生まれるという事です。
例えば、先の例で挙げたトレードの内訳ですと、勝率に対するリスクリワードは、
・99%の確率で1万円の利益が得られる = リターン「1」
・1%の確率で100万円の損失を被る = リスク「100」
という事になる為、この条件で投資・トレードを手掛けていくならば、単純に「99%以上(≒ 100%)」の勝率が必要という事になります。
ただ、このような勝率はまず現実的ではありませんので、上記のような条件を改善する場合、自ずとリスクリワードの条件を引き上げなければなりません。
そして、そのリスクリワードの条件を引き上げる手立てとしては、
・勝ちトレードのリターンを大きくする
・負けトレードのリスクを小さくする
これらの内のいずれか、もしくは両方の条件を追求していく必要があります。
要は「利確を遅く」するか、或いは「損切りを早く」するか、もしくは「両方」を徹底しなければならないという事です。
ですがこれは、先の勝率を高める手立てとは「逆」のアプローチが必要になる事から、リスクリワードを引き上げる行為は、必然的に「勝率を引き下げる事」に直結してしまいます。
よって、長期的に資産を構築している投資家・トレーダーは、そのジレンマの狭間で、
・勝率を重視するか
・リスクリワードを重視するか
このどちらかに重きを置いた形で売買を行なっているのが実情なんです。
勝率か、リスクリワードか、あなたはどちらを重視しますか?
その上で、冒頭で取り上げた高勝率の条件、
・99%の確率で1万円の利益が得られる
・1%の確率で100万円の損失を被る
こちらのような条件であれば、長い目で見て間違いなく「破綻」する事は避けられませんが、実際、高勝率を維持したままリスクリワード比率を高める事で、長期的に「勝てる(稼げる)条件」を構築する事は可能です。
もちろん、高勝率を前提とする条件を構築するからには、リスクリワード比率は「損失」が上回る形にはなりますので、万一、負けの目を引いてしまった際の損失は大きくなる傾向にはあります。
ただ、それでも損失を「カバー」できるだけの勝率を確保できれば、トータル的な損益をプラスにする事は十分可能ですので、そのようなトレードルールは、長期的な観点で「有効な条件」に他なりません。
逆に、リスクリワードを高めると、それに比例する形で勝率が下がる傾向にありますが、いずれにせよ、トータル的な収益率がプラスを維持し続ける限り、それもまた有効な条件という事になります。
以上の事から、相場の世界で常識視される「損小利大」が全てではなく、飽くまで「勝率」と「リスクリワード」の相対的なバランスが全てだという事です。
まとめ:損切り,利確の適正比率を左右する勝率とリスクリワードの関係性とは
投資・トレードにおいては、勝率の高さがそのまま長期的な良パフォーマンスに直結するとは限らず、また逆に、勝率が低いから悪いパフォーマンスに終始するとも限りません。
勝率が高かったとしても、リスクリワードの損失比率が高ければ長期的な損益はマイナスに偏る事になり、勝率が低かったとしても、高いリスクリワードが実現できれば十分稼ぎ続けられるからです。
ただ、リスクリワード比率を十分に織り込んだ上で利益が残せるのであれば、それは高勝率を前提としたトレードルールでも「勝てる(稼げる)」という事になる為、飽くまで、
・勝率に対してのリスクリワード
・リスクリワードに対しての勝率
これらを相対的に捉えたバランスの上で、長期的に稼ぎ続けられるトレードルールを構築できるのなら、方向性としては「どちらでも問題ない」という事です。
以上、『損切り,利確の適正比率を左右する勝率とリスクリワードの関係性とは』について言及させて頂きました。
また、本記事に関連した記事も他に幾つかございますので、興味があれば、併せてご参考ください。
> 含み益に対する考え方と有効な利確基準(ルール)を確立する為の視点
> 含み損に対する考え方と有効な損切り基準(ルール)を確立する為の視点
本記事があなたの投資活動に、何らかの形で寄与できれば、幸いでございます。
最後までご精読頂き、ありがとうございました。